トラブルにあい困り果てる女性

これまで自社で長い間使ってきた独自ドメインを、泣く泣く手放さなくてはならない事態に陥る事業者が相次いでいます。

ホームページに必要な、Webページのデータ、サーバー、ドメインの3点セットは、これまでホームページ制作業者がすべて管理をするのが一般的でした。

しかし、CMS(コンテンツマネージメントシステム)と呼ばれる、いわゆるWordPressやWixなどといったツールの登場と、Google検索で出てくる情報により、ホームページ制作業者がすべてを管理する必要は薄れてきています。

昨今のインハウスWebマーケティングの流れもあり、ホームページ制作業者の手を離れて自由に自社でホームページを管理したいと考える事業者が増えてきました。

そこで、ホームページを他の制作業者あるいは自社で作成し、いざドメイン設定となるわけですが、このとき元のホームページ制作業者から独自ドメインの移管を断られるという事例が発生しているのです。

独自ドメインを使えないとどうなるか

2000年前後にホームページを作成し運用している企業ならもう、10年20年とドメインを使っていることになります。しかしもし、そのドメインを自社で使えなくなるとなったら、どうなるでしょう。

当然ですが、ホームページへアクセスできなくなります。別のドメインを取得して、同じようなホームページを作り直して公開することはできます。しかし、Google検索上での検索順位は、一から出直しになります。ドメインの管理権限を奪われてしまっているので、301リダイレクトによる引き継ぎも行えません。

また、メールも使うことができなくなります。メールが使えないとどうなるか?

お客様との連絡ができなくなることはもちろん、メールアドレスを使って登録した、SNSやオンラインゲーム、ネットバンク、電子マネーなどあらゆるサービスが使えなくなるトラブルに至ります。

どれだけのサービスに自社のメールアドレスを登録したか、多くの人が把握していないと思います。実はこれが一番深刻かもしれません。

移管できないと言われた場合の対処方法

なぜ、ドメインを移管できないのか。実は、管理している業者が拒否をしているだけにすぎないことが、大変多いのです。

特殊なドメインや、手続きしてまもないドメインは、確かに移管が難しいことがあります。しかし、多くの人が使っている「.com」「.net」「.jp」であれば、通常難なく移管できるのが大半です。

まず契約書にて、解約時の独自ドメインの扱いはどうなっているかを確認します。移管できない旨の記載がある場合は、残念ですが諦めることになるでしょう。

しかし、記載がない、あるいはそもそも契約書がない場合は、交渉次第で移管してもらえる可能性があります。

まずは、https://www.aguse.jp/ などのサイトで、ドメインの登録者情報が誰になっているかを確認します。

この登録者情報が自社名で、公開連絡窓口がホームページ制作業者であるなら、ドメインは自社のもので、制作業者は単なる担当者であると考えるのが自然です。

とはいえ、ドメインの手続きに関する連絡はすべて公開連絡窓口を通じて行いますから、担当者である制作業者が手続きをすすめてくれなければどうにもなりません。

ここから交渉して対応をお願いするということになりますが、移管ができないといわれたドメインの状況を下調べした上で、元の制作業者と交渉するのが、スムーズです。

ドメインを管理しているレジストラを探し、なぜ移管ができないのか、どうしたらいいのか相談をしてみましょう。何か処置をしてくれることはありませんが、いい情報を得られることがあります。

素人だと思っていた顧客が、レジストラで情報仕入れて交渉してくるわけですから、制作業者も驚くでしょう。意外とあっさり態度を変えて対応してくれることもあります。

制作業者が交渉に応じてくれない場合

Webコンサルタントや弁護士など専門家の手を借りるか、あきらめてドメインを手放すか、ということになるかと思います。

中には、ドメイン移管と引き換えに、10万円、100万円という金額を提示してくる制作業者もいます。

ドメインを失った場合の損害を考え、それに見合うのであれば、支払ってでも取り返すというのもひとつの手段です。納得はできませんが。

法的手段をとる方法については、「所有権」という概念について、考慮すべき部分があるようなので、ここでは明言を避けます。

ただし、過去の判例で有効なものがありました。もしかしたらこの判例が使えるかもしれません。
第5603号 ドメイン名所有権確認請求事件 – 裁判所

まとめとトラブル予防方法

自社のドメインについて、まず認識をしましょう。難しいとか、わからないとか言わず、戸籍やマイナンバーくらい大事なものだと認識してください。

そして、ドメインの管理は自社ですることをお勧めします。年に一回費用を支払うだけです。自動車保険と似たようなもの。忘れたら失効します。

そして何より、ホームページを作成する際に、ドメイン・サーバー・Webページの3点セットが、自社の持ち物になるのか、ただの借り物なのか

契約をしっかり交わし、契約書をよく確認するようにしてください。

2020年春から、民法の債権法改正に伴い、契約書というものがより一層大事になってきます。提供する側はもちろん、利用する側も意識の向上をして自衛に勤めていただけたらと思います。